世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1537

ILC東北建設に向けて国際学会が「仙台宣言」:日本での建設の意義を発信し最終決定を迫る

山崎恭平

(北文化学園大学 名誉教授)

2019.11.11

 10月28日から11月1日までの5日間,仙台市内青葉山山麓の仙台国際センターで線形大型加速器の国際学会LCWS(リニアコライダー・ワークショップ)が開催された。国際研究者組織のLCC(リニアコライダー・コラポレーション)が主催したもので,国際プロジェクトのILC(国際リニアコライダー)建設候補地の東北地方では2016年の盛岡市内での開催に次ぎ,欧米やアジア等23カ国から前回を上回る約430人の研究者が参加した。ILCプロジェクトは,スイスに所在しヒッグス粒子を発見したCERN(欧州合同原子核研究機関)のLHC(大型ハドロゲン加速器)の後続として日本の岩手県と宮城県にまたがる北上山地に建設計画が検討されてきた(詳細は2019年9月2日付インパクト弊稿No.1467等参照)。

 学会は初日に全体会議を開き,冒頭に東北大学の大野英男総長がLCWSへの議論を期待し,村井嘉浩宮城県知事はILC誘致の意義を訴え,またLCCのリン・エバンス代表は日本での建設実現を呼びかけた。2日目以降は,分科会で加速器のコスト削減や技術進歩のテーマに加えて素粒子物理学の研究成果に関する議論が行われ,またセンター内の展示場ではビジネス関連のイベントが併設され内外55企業・団体による機材や技術の展示や交流も行われた。最終日には,計画を推進するLCCの上部組織ICFA(国際将来加速器委員会)のジェフリー・テイラー議長が講演し日本政府の誘致決定を促し,LCWSはILCのコスト削減や技術進歩等の学会議論を総括して,日本でのILC建設を国際プロジェクトとして推進する「仙台宣言」を発信した。

 「仙台宣言(Sendai Statement)」は,仙台市で開催された国際学会LCWS2019に多くの国と地域から科学者が集まり,世界の仲間とともにILCの実現に向けた4点の内容を宣言した。すなわち,第1に我々はILC建設の重要性を再認識し,第2にILCの設計は成熟しており建設の準備が整っているとし,第3には2019年3月のICFAとLCB(リニアコライダー国際推進委員会)の合同会合で表明された文部科学省のILCへの継続的関心を日本政府の最初の公式見解として高く評価し,また東北地方のコミュニテイや産業界から力強い支持を受けているとしている。そして,第4には,我々は日本でのILC建設及び科学的探究を国際プロジェクトとして推進すると改めて誓い結んでいる。

 文部科学省の継続的関心の具体的内容は明らかでないが,LCWSの中では欧米の研究者から日本政府が米国,フランス,ドイツとそれぞれ話し合いを進めているディスカッション・グループ(協議会)の現状が紹介され,米国大使館の担当者は「米国は今後も日本と情報交換を続け,ILC計画に参加する意思」を表明している。また,懸案の建設費用の国際分担や運営組織についてはILC誘致に関係するKEK(高エネルギー加速器研究機構,茨城県つくば市)が日,米,独,仏,インドの研究者7人から成る国際作業部会を設置し,提言書を文部科学省に提出している。

 日本政府のILC誘致判断は,来年1月に策定作業が始まる次期「欧州素粒子物理戦略(2020~24年)」と来年初めに公表予定の日本の長期計画「マスタープラン」にILC計画が挙げられることが望ましく,時期は間近に迫っている。このタイミングに合わせて,LCWS2019の議論と「仙台宣言」は大きな影響を及ぼしたと推察されよう。また,千載一遇の国際プロジェクトと目されるILCの建設候補地を抱える岩手県や宮城県の新聞等マスコミは,このニュースを連日大きく報道した。しかし,中央の首都圏ではほとんど報道が見られず,国民が認知し得ていないギャップの大きさが気になっている。

 仙台市内でも11月9日からの「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@2019」,「仙台防災未来フォーラム」,「震災対策技術展」の3つのイベントの広報が目立ち,国家百年の計に相当するILCプロジェクト関係の国際学会開催が脇に寄せられているのではと,不満を感じた。「BOSAI」も日本が世界に貢献できる重要な資源と役割であるが,併せて日本や東北地方にとって千載一遇の機会を逃さないように,国際プロジェクトILC建設の実現を鶴首して待ちたいと思う。

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