世界経済評論IMPACT(世界経済評論インパクト)

No.1008

経済成長に不可欠な国土構造の垂直統合型から水平ネットワーク型への転換

戸所隆

(高崎経済大学 名誉教授)

2018.02.12

 日本は明治以来,欧米先進諸国に追いつくべく努力を続けてきた。日本の国土構造・都市システムはキャッチアップを効率的に進める中央集権的国家体制を基本に東京を最上位とする垂直統合型となり,この体制は先進諸国を追尾した高度経済成長期まで効率良い構造であった。また,日本の垂直統合型国土構造は,コンピュータ・システムが閉鎖・垂直ネットワーク型時代には効率よく機能し,GDP世界第2位となった。

 しかし,1980年代後半からコンピュータ・システムは地球規模でダウンサイジング,分権化と開放・水平ネットワークへと構造転換し,従前の産業革命以来の工業社会が情報革命に基づく知識情報社会へ急速に変化してきた。この知識情報社会に日本が成長を続けるには,国土構造と都市構造を知識情報社会の基盤を成すコンピュータ・システムに対応した構造に転換する必要がある。東京はそれを実現しつつある。

 東京の都市構造は,かつては中枢管理機能の集積する丸の内・大手町,霞ヶ関・永田町と消費中心機能の集積する日本橋・銀座などからなる都心を頂点に,消費機能中心のみの新宿・池袋・渋谷などの副都心や吉祥寺などの副副都心と階層ネットワーク型に一体的に構築されていた。しかし,コンピュータ・システムのダウンサイジングと期を一にして新宿・池袋・渋谷・品川・大崎などの副都心をはじめ多くの中心地に企業の本社などの中枢管理機能が分散立地し,小都心化すると同時にそれを核に個性的な小都市化している。この結果今日の東京は,中心と周辺,規模の大小はあるものの上下関係のない多くの個性豊かな小都市が水平ネットワークした構造に再構築されつつある。

 東京は構造転換しつつ成長を続けるが,他の都市や国土全体の構造転換は不十分である。その結果,東京の拡大の他方で地方の衰退は深刻化し,垂直統合型ネットワークは益々強化された東京一極集中型国土構造となっている。分権化により地方間交流が進めば有効活用できる地方空港などの様々な既存国土基盤活用が十分に活用されず,東京の基盤整備は需要に追いつかない状態にある。今日の情報化・国際化に対応した知識情報化社会にはダウンサイジング・ネットワークに適した地域社会システムが求められるが,日本では国民意識を含め垂直統合型のままである。日本がバブル崩壊以降の低成長から脱却できずに国際的地位低下を招くのは,国土構造をはじめ多くの地域社会システムが従前の閉鎖型垂直ネットワークのままで,システム相互間のミスマッチによるといえよう。

 たとえば,情報化の一翼を担う固定電話システムは依然として階層ネットワークである。すなわち,市外局番-市内局番-個人番号のうち個人番号は4桁統一であるが,市外局番-市内局番は都市規模によって東京は03-○○○○,京都は075-○○○,地方主要都市は○○○○-○○,小規模町村○○○○○-○と階層化されている。これでは移動体電話に対応できないため,日本では070・080・090-○○○○-○○○○と別システムで対応している。また,鉄道にしても東京を中心に「上り・下り」があり,新幹線料金は東京で分断され,新幹線と在来線間のJR乗り継ぎ特急券は東京のみ適用されない。

 他方で,アメリカの交通ネットワークや都市システム・地域社会システムの多くが以前から分権化・水平ネットワークされており,固定電話システムも移動体電話が開発される前から全米で市外局番-市内局番-個人番号が○○○-○○○-○○○○に統一されていた。そのため,移動体電話の開発もその普及も日本よりスムーズであり,1980年代以降のアメリカの情報化社会への転換はダイナミックに展開した。日本を世界NO.1と煽てる他方で,急速に知識情報社会へのシステム転換を図るアメリカの姿を脅威に感じた当時のアメリカ生活が思い出される。

 日本の地域社会システムや国民意識を垂直統合型から水平ネットワーク型に構造転換しない限り,日本がいつまでも経済大国では居られず,政治的・文化的優位性も喪失されるであろう。しかし,東京の人は地方の人より偉いと思う人が東京のみならず地方でも多いという調査結果もあり,地域社会システムや国民意識の転換は容易ではなく,インパクトの大きな政策の実行が不可欠である。私はこれまでの研究結果から,1990年代から2000年代初頭に論議された首都機能移転を最も効果の期待できる施策と考えている。ネットワークとフットワークの良い小さな首都機能都市を創造し,一気に国政改革,東京の一極集中是正・世界経済首都化,災害対応力の強化を図る必要がある。また,国際ネットワークに優れ,警備しやすく治安の良い首都機能都市とすることで,首脳が気軽に交流できる国際政治行政都市化も図れよう。今ならまだ日本の国力からして経費的にも可能であり,費用対効果も大きいといえ,首都機能移転で垂直統合型から水平ネットワーク型国土構造への転換を早急に図ることを主張したい。

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